メディア一覧へ戻る
  • TOP
  • media
  • 量産用の金型に移したら、顔が別人になった、「バリカタ君豚まん」5か月の開発記録

2026.09.03

  • #食品開発支援

量産用の金型に移したら、顔が別人になった、「バリカタ君豚まん」5か月の開発記録

福岡ソフトバンクホークスのマスコットキャラクター「バリカタ君」を、そのままの形で豚まんにする。2026年7月1日から、みずほPayPayドーム福岡で「バリカタ君豚まん」の販売が始まっています。

そこに至るまでの約5か月間で、私たちが一番長く向き合ったのは、「顔が変わってしまう」という問題でした。プレスリリースには書ききれなかった過程を、ここに残しておきます。うまくいった話だけではありません。

チャレンジしたのは、立体キャラクター

プロジェクトが動き出したのは2026年の1月末です。

スポーツチームのマスコットを使った食品のコラボレーションは、これまでも数多くあります。ただ、その多くはパッケージにキャラクターを印刷する、あるいは平面のデザインを商品に落とし込む形です。

今回いただいた依頼は違いました。キャラクターの形そのものを、食品で再現してほしい。やってみると、これがとにかく難しい。

最初のつまずき ― 図面どおりに作ったのに、バリカタ君に見えない

バリカタ君の顔は、目、耳、鼻、リーゼント、ほっぺのうずまきの5つで構成されています。図面をもとに造形の検討を始めたのですが、初期の試作品を見て手が止まりました。

パーツの位置関係は図面どおり。なのに、バリカタ君に見えないのです…!

イラストは平面だから成立している。立体にすると影ができ、角度によって見え方が変わり、印象が崩れる。「図面どおりに正しい」ことと「バリカタ君に見える」ことは、別の問題でした。

さらに厄介だったのが、手作業のばらつきです。目元のパーツは職人が一つひとつ手で配置します。1ミリ単位のずれでも、顔は表情を変えます。数個の試作品を並べてみると、明らかに兄弟のような、微妙に違う顔が並びました。

キャラクター商品である以上、お客様がどれを手に取っても同じ顔でなければいけません。

この記事はここから最後まで、ずっとこの一点の話です。

転機 ― サングラスをかけてもらう

2月から4月にかけて、試作を重ねました。そして途中で、大きなデザイン変更を決めます。

バリカタ君に、サングラスをかけてもらう。

これは苦肉の策であると同時に、良い策でもありました。サングラスにすると、目元の細かいパーツ配置に頼らなくてよくなります。手作業のばらつきを、デザインで吸収できる。

……はずだったのですが、現実はそう甘くありませんでした。今度はサングラスそのものが新たな壁として立ちはだかったのです。

最大の壁 ― 量産用の金型に移したら、顔が別人になった

ここで、型の話を整理させてください。

6月、量産に移すためステンレス製の金型を起こし、上がってきたものを見て、言葉を失いました。顔が違う。

生地の型抜けを良くするための補正が入った結果、サングラスの輪郭が丸みを帯び、中央の間隔が詰まっていたのです。数字としてはわずかな違いです。でも、顔というのは残酷なもので、そのわずかな差で別人になります。

「3Dプリンターで作った型では完璧だった顔が、量産用の金型で成形したら別人になって上がってきました。ここからどう戻すかが、このプロジェクトで一番苦しいところでした(担当者)」

同時に、もうひとつの現実にも直面しました。手作業によるパーツ配置の個体差は、どうやっても完全にはなくならない。完全に同一のものを連続して製造することは、原理的に難しい。

納期は目前でした。

越え方 ― 「キャラクターらしさ」を、数値と図で定義する

ここで私たちが取ったのは、正攻法でした。

それまで「なんかバリカタ君っぽくない」という感覚で共有されていた判断を、数値と図で定義する。

 ・パーツを全体的に上に寄せる(どれだけ寄せるかを数値で指定)

 ・リーゼントの太さを1.5〜2倍にする

 ・サングラスの型を、再現性と量産性の2軸で見直す

そして、どこまでが出荷可能でどこからが不可なのかを判断するための「OK/NG判定基準マニュアル」を作りました。文章ではなく、実物の写真に基準線を引いたビジュアルです。

これがあると何が変わるか。職人が交代しても、判断がぶれません。

「完全に同一のものは作れない」という前提を受け入れたうえで、「どこまでなら同じ顔と言えるか」の線を全員で共有する。個体差をゼロにするのではなく、許容範囲を定義する。これが答えでした。

工場の皆さんと一緒にこのマニュアルを作った時間が、このプロジェクトで一番濃かったと思います。

味の設計 ― 球場で、子どもが、歩きながら食べる

造形と並行して、中身も詰めていきました。

前提としたのは「誰が、どこで、どう食べるか」です。みずほPayPayドーム福岡には、家族連れのお客様が多く来場されます。小さなお子様が、売店で買って、座席まで持って歩いて、試合を見ながら食べる。

そこから逆算しました。

餡は豚肉ベースに、ねぎの甘みと生姜の風味をほんのり。生姜を効かせすぎると子どもが食べられません。かといって抜くと締まりがなくなる。この配分の調整に、何度も試作を重ねました。

生地は「バリカタ君」という名前に反して、しっとりと柔らかい配合です。売店から座席まで持ち歩く時間を想定して、冷めてもおいしいことを条件にしました。

発売を1か月延ばした判断

当初、発売は5月下旬を目指していました。結果として、7月1日まで延期しています。

立体造形のクオリティをもう一段上げること、試作を再検証すること、そして冷凍保存における安全性を十分に確認すること。どれも、間に合わせで済ませられるものではありませんでした。

延期のご相談をするのは、正直しんどい判断です。それでも、球場に並ぶ商品として、そしてバリカタ君というキャラクターをお預かりしている立場として、ここで妥協する選択肢はありませんでした。

6月下旬、改善サンプルの最終合意をいただきました。

いま、球場で

販売が始まってから、SNSでお客様の投稿を追うのが私たちの日課になりました。立体的な造形に驚く声、実物のサイズに触れる声。みずほPayPayドーム福岡の球場グルメのひとつとして、いまも提供が続いています。

この5か月でわかったこと ― 難しいのは「かわいく作ること」ではなかった

キャラクターを食品にするとき、難しいのは造形の美しさではありませんでした。
同じものを、作り続けることです。
一個だけなら、時間をかければ完璧なものが作れます。でも商品は、毎日、何個も、違う人の手で作られていく。そのすべてがバリカタ君でなければいけない。
造形の設計、型の製造、味の設計、そして品質管理の仕組みづくり。この全部が揃って、初めてキャラクターの食品化は成立します。

株式会社MYPLATEは、食品の企画・開発・製造・販売を手がけています。
今回のバリカタ君豚まんでは、造形の設計、味の設計、量産用金型の設計、そして出荷判定基準の策定までを担当しました。造形だけ、味だけでは、この商品は成立しませんでした。
同じような壁に心当たりのある方は、お気軽にご相談ください。

【開発タイムライン】
 2026年1月29日 プロジェクト発足。図面からの造形検討を開始
 2月中旬    仕様決定MTG・試作開始
 3月〜4月    複数回の試作、味付け調整、サングラス仕様へのデザイン変更
 5月中旬    最終サンプルの味・見た目を仮承認
 6月中旬    量産金型への移行時に形状トラブル発生、改善対応
 6月下旬    改善サンプルの確認、製造・納品体制の確立
 2026年7月1日  みずほPayPayドーム福岡にて販売開始

まずはお気軽にご相談ください

無料で相談する

CONTACT

お問い合わせ

お気軽にご相談ください

食品開発支援やブランドに関するご相談はこちらから。

お問い合わせ