【管理栄養士監修】妊娠中に魚を食べてあらゆる健康リスクを回避!

妊娠中の魚の摂取は、水銀を多く含む魚に注意しながら種類を選ばなければならないので、食べること自体を控えてしまう女性も多いのではないでしょうか?

しかし、実は妊娠中の魚の摂取が非常に重要であることは、多くの研究で分かっています。

そこで今回は、妊娠中の「魚」について、MYPLATEの代表であり管理栄養士のしき先生に話を聞き、その内容をまとめてみました。

妊娠中の魚介類の摂取は子どもの脳の発達に影響する

スペインの4つの地域(Asturias、Gipuzkoa、Sabadell、Valencia)の2,644人の妊婦を対象にした観察研究によると、妊娠中の母親が魚介類を多く摂取することが、子どもの神経心理学的発達に良い影響を与える可能性があるようです(Julvez J, et al. 2016)。

具体的には、妊娠中に週340gの魚介類を食べた母親の子どもは、認知機能や運動機能などの神経心理学的発達に正の関連性が示されました。これは、魚介類に含まれるオメガ3脂肪酸(DHAやEPA)が、子供の認知能力や言語能力の発達に関連している可能性があります。

また、米国食品医薬品局(FDA)が2014年に公表した報告書によると、妊娠中および授乳中の女性が週に2回(8〜12oz=227~340g)の魚の食事を摂取することで、子どもが9歳になるまでにIQが3.3増加する可能性があるとされています(McGuire JA, et al. 2016)。また、魚に含まれる栄養素は、胎児の神経発達に重要であることが示されています。

📝メモ
一般的にIQ15は偏差値10程度とされているので、IQ3.3の増加は、おおよそ偏差値2程度の変化に相当すると考えられる。

魚に含まれるオメガ3脂肪酸は、妊娠中や授乳中に限らず、人の健康づくりにおいて重要な役割を担っているので、ママにとっても子どもにとっても、ダブルでうれしい効果が期待できます。

ただし、魚介類には水銀やその他の汚染物質が含まれる可能性があるため、適切な種類と適切な量の摂取が重要です。

魚の摂取は早産リスクを低下させる

2014年、ヨーロッパの出生コホート研究を対象に、妊娠中の魚摂取と胎児の成長および妊娠期間との関係について調査した研究によると、妊娠中に適度な量の魚を摂取することが、早産のリスクを低下させ、出生体重をわずかに増加させることが示されています(Leventakou V, et al. 2014. )。

一方で、魚に含まれる水銀やPCBなどの汚染物質が胎児の神経発達に悪影響を与える可能性があることも指摘されており、先述のとおり、魚は適切な種類と適切な量の摂取が重要といえます。

魚に豊富なビタミンDは健康メリットだらけ

魚には、ビタミンDが豊富に含まれます。魚を摂取するメリットは、このビタミンDにも隠されています。

2012年に発表された、妊娠中のビタミンD摂取の利点と、母親、新生児、乳児の健康に及ぼす影響についての最新の研究をまとめたシステマティックレビューとメタ分析によると、妊娠中のビタミンDサプリメントが、小児の骨粗鬆症、自閉症スペクトラム障害、アレルギー、喘息、感染症、糖尿病、妊娠高血圧症候群、早産、出生体重低下などのリスクを低減する可能性があるとされています(Thorne-Lyman A, Fawzi WW. 2012.)。

ビタミンDは、魚やサプリメント以外の食品から十分量摂取するのは一苦労です。そのため、魚をいかに習慣的に摂取できるかがビタミンD補給のポイントになります。

妊娠中の魚の上手なとり方

オメガ3脂肪酸やビタミンDをしっかり補うためにも魚を積極的に食べたいところですが、気になるのが水銀の含有量です。

1回または1週間あたり魚の摂取量で体内の水銀濃度が大きく変わることはないので、以下の表の摂食量や頻度を目安に、魚のとり方を工夫しましょう。

引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版) 策定検討会報告書」(参照2023-11-15)

<ポイント>

  • メチル水銀の含有量が多いマグロやメカジキなどの摂取は頻度を少なめに
  • サケ、アジ、サバ、イワシ、サンマ、タイ、ブリ、カツオ、ツナなどの家庭によく登場する魚はとくに注意が必要ないので、積極的にとる
  • 魚以外に、アサリやシジミ、タコ、イカなどもおすすめ

参考文献


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